映画好きとか言っておいて恥ずかしいですが、実は『デッド・ドント・ダイ』がジム・ジャームッシュ監督映画の初鑑賞作品でした。
でもまあ、映画館でリアルタイムに観れたからいいかな!!
個人的には最近私の中できている俳優、アダム・ドライバーのプリップリのお尻が観れるぞ、ということでめちゃめちゃ楽しみにしてました。
予告からしてゾンビ映画だけどあまり怖くなさそうだしと。
ただ観終わって思ったのは……
めっちゃ人を選ぶ映画だね!!(笑)
もう全編含めてギャグです。
ギャグゾンビ映画です。
それなのに、その笑いのツボが絶妙なのでハマる人とハマらない人がいるんですね。
劇場でも声出して笑っちゃっている人もいれば、寝ている人もいました。
なので、正直この作品だけを観てジム・ジャームッシュ監督作品自分に合わないわと思っても諦めてはいけない。
私も初めてで戸惑ったけど。
他のジム・ジャームッシュ作品を観てから、『デッド・ドント・ダイ』を見ると捉え方が変わるかも。
以降の記事はネタバレを含みます。
未見の方はご注意ください。
目次
『デッド・ドント・ダイ』のあらすじ・キャスト
『デッド・ドント・ダイ』はあらすじを知ったからといって理解できるとは限りません。
でも逆に言えば物語的に言えばあらすじ以上でも以下でもない。
あとはギャグセンスが自分にハマるかどうかだけです!
キャストはかなり豪華で、これまでのジム・ジャームッシュ作品を観てきた人たちには、ご贔屓の俳優勢ぞろい!という感じで楽しめたのではないでしょうか。
あらすじ
警察官が3人しかいないアメリカの田舎町センターヴィルで、前代未聞の怪事件が発生した。無残に内臓を食いちぎられた女性ふたりの変死体がダイナーで発見されたのだ。困惑しながら出動した警察署長クリフ(ビル・マーレイ)と巡査ロニー(アダム・ドライバー)は、レイシストの農夫、森で野宿する世捨て人、雑貨店のホラーオタク青年、葬儀場のミステリアスな女主人らの奇妙な住民が暮らす町をパトロールするうちに、墓地で何かが地中から這い出したような穴ぼこを発見。折しも、センターヴィルでは夜になっても太陽がなかなか沈まず、スマホや時計が壊れ、動物たちが失踪する異常現象が続発していた。
やがてロニーの不吉な予感が的中し、無数の死者たちがむくむくと蘇って、唖然とする地元民に噛みつき始める。銃やナタを手にしたクリフとロニーは「頭を殺れ!」を合言葉に、いくら倒してもわき出てくるゾンビとの激闘に身を投じるが、彼らの行く手にはさらなる衝撃の光景が待ち受けていた……。
引用元:『デッド・ドント・ダイ』公式HP
はい。この通りです。
思わせぶりなシーンとか設定とかありますが、伏線回収はされません。
ジム・ジャームッシュ監督のお遊びについていけない人達は当然振り落とされてしまいます…。
キャスト
ジム・ジャームッシュ監督がインタビューでも答えている通り「気心の知れた俳優たちと一緒に楽しめる作品にしたかった。」と語っている通り、ジム・ジャームッシュ監督お気に入りの俳優たちが勢ぞろいです!
ビル・マーレイ:クリフ・ロバートソン役
私の中でビルマーレイは『ゴースト・バスターズ』のイメージ。
ビル・マーレイはマネージャーやエージェントを雇っておらず、新規のオファーが難しいともいわれています。
でもそれだけ自由に縛られず出演作を決められる彼だからこそ、最高の演技ができるんですよね。
ジム・ジャームッシュ監督とも旧知の仲なので、『デッド・ドント・ダイ』ではかなり雑な扱いを受けています。
これも監督からの信頼があるイジリなんでしょうね。
アダム・ドライバー:ロニー・ピーターソン役
アダム・ドライバーは最近沢山素敵な作品に出てますよね。
最初に観たのは『スター・ウォーズ』の続三部作シリーズのカイロ・レンが初めてでした。
いや、全然イケメンじゃないし何でこの人が選ばれたのー?!!と思っていたけど、本当にすみません。アダム・ドライバーの魅力を全然わかっていませんでした。
ジム・ジャームッシュ監督作品でいうと『パターソン』に出ていますよね。
ずっと観たかった作品で、観ちゃうのが惜しくてまだ観れてないんですけどね(笑)
今回もちょっとぬぼーっとした役どころです。
ティルダ・スウィントン:ゼルダ・ウィンストン役
ティルダは一度見たら忘れられない魅力的な顔立ちをしてるなぁと私は勝手に思っている。
今回は金髪ワンレンの長髪。しかも謎に部屋には和室があって仏像まで置いてあり、日本刀を持っている葬儀屋という設定。
すでに設定が渋滞してるんですが……いいんでしょうか。
にしても日本刀の振り方が『スター・ウォーズ』っぽいんですよね。
やっぱり宇宙をイメージしているのかしら。
『デッド・ドント・ダイ』の感想
『デッド・ドント・ダイ』の感想なんですが、これ結構難しいです……。
何といっても伏線回収もほとんどされないし、ゾンビ映画としての新しさみたいのも正直そこまであるわけでもない。
淡々と進んでいくわりには、あまりにもいっぱいネタが降ってくるので受け止めるのが大変という感じの映画なんですよね。
そんな『デッド・ドント・ダイ』ですが、私が気になったところはこちら!!
●突然始まる劇中劇
●キャストとネタの贅沢な無駄遣い
●ボブが本当に世捨て人である証拠
それぞれ説明していきますね。
突然始まる劇中劇
『デッド・ドント・ダイ』はクリフとロニーが森にいるボブにフランクの鶏を盗んだか問いただしにいくところから始まります。
そこからの帰り道にラジオから流れてくる音楽……。
クリフ「この曲聞いたことあるような気がするんだが。」
ロニー「『デッド・ドント・ダイ』ですよ。これテーマ曲ですからね。」
とこんな唐突なやり取りがあるんです。
しょっぱなから私は「え、何でこの会話入れたの?テーマ曲ってどういう設定なんだろう?」と思いながら観始めました。
これはあとから分かるんですがロニーのいう「テーマ曲」ていうのは、今自分たちが出演している『デッド・ドント・ダイ』の主題歌ということなんですよ。
要するに開幕10分くらいでいきなり
私たちは『デッド・ドント・ダイ』というジム・ジャームッシュ監督の映画に出演していて、今流れている曲はこの映画のテーマ曲なんですよ。
という分かりずらいアピールが始まる訳です(笑)
ちなみに最後らへんに観客にも知らされるのですが、クリフ役のビル・マーレイはジム・ジャームッシュ監督から途中までしか台本を読ませてもらってないという設定。
一方でロニー役のアダム・ドライバーはジム・ジャームッシュ監督に最後まで台本を読ませてもらってオチまで知っているという設定です。
ジム・ジャームッシュ監督、アダム・ドライバー贔屓しすぎじゃない??
そして二人とも映画の役を飛び越えて自分自身として出ちゃってるじゃないですか。
面白過ぎる!!!!
なので最初からロニーはひたすら「まずい結末になる。」と繰り返し言っているんです。
だって台本最後まで知ってるんだもの(笑)
キャストとネタの贅沢な無駄遣い
『デッド・ドント・ダイ』は役者を贅沢に使って遊んでいます。
作られた物語である以上、出てくる登場人物には何かしら役割が与えられることが多いのですが『デッド・ドント・ダイ』はその限りではありません。
純粋に、こういう登場人物がいたら面白そう!という監督の発想で出てくる人たちが圧倒的に多い。
なにせ皆ゾンビに食われますから(笑)
ホラーオタクの雑貨屋の兄ちゃんは、『遊星からの物体X』やジョージ・A・ロメロ監督作品などに詳しく、ゾンビが現れてからも立てこもり作戦を実行したりして生き残りそうなのにあっけなく死にますし。
白人至上主義のフランクや金物屋店主で黒人のハンクも序盤に言葉を交わしただけで特に進展もなく二人とも死にます。
「アメリカを白人の国に戻そう」という文言が入った帽子を黒人のハンクの隣で堂々と被り、「コーヒーは”ブラック”が~」と話しているのをみて、とんでもないレイシストだなゾンビにやられてしまえ、と思ったことは内緒。
余談ですが、『デッド・ドント・ダイ』を観たときは黒人差別反対運動が世界的に話題になっていた頃だったので、偶然にしてもすごくタイムリーだなぁと思っていました。
そして『デッド・ドント・ダイ』はゾンビだけでなく宇宙も関わってきますからね。
だって、アダム・ドライバーですよ。
ダイナーにちっこい車に大きい図体を乗せてくるロニーの車のカギのキーホルダーはスター・ウォーズモチーフ。
しかもそれをゼルダに突っ込まれるというおまけつき。
何といっても目を引くのは引っ張りだこのセレーナ・ゴメス!!!
彼女この夏の公開作だけでも『デッド・ドント・ダイ』『ドクター・ドリトル』『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』と立て続けに出演しています。過酷スケジュール…。
ゾンビに食われた人間は、ゾンビになってしまうのでそれを防ぐためにロニーに首ちょんぱにされてしまう。
えー首ちょんぱにされるためだけにわざわざ出演したのか。
セレーナ・ゴメスの無駄遣いが半端なかったです。
ボブが本当に世捨て人である証拠
『デッド・ドント・ダイ』はボブに始まり、ボブに終わると言っても過言ではありません。
ゾンビたちが己の欲望を持て余した者たちだとしたら、その対極をいくのは物欲も何もかも手放した世捨て人のボブでしょう。
だからこそこの状況の唯一の解説者としての役割もしているのです。
ただし世捨て人であるというのはクリフの証言でしかありません。
もしかしたら違う町や夜中にこっそり俗世に戻ってきているやもしれない。
そう疑いながら私は『デッド・ドント・ダイ』を観続けていました。
しかし、ボブが世捨て人であるという決定的な証拠が映画の最後で明らかになります。
ボブは欲しいものを求めてさまようゾンビたちをみてこんなことを言うのです。
ゾンビは物質主義の遺物だ。
皆して人気のゲームやなんかを欲しがる……。
そう字幕だと「人気のゲーム」となっていますが、実際の英語のセリフでは「Nintendo GameBoy」と言っているんです!!!!!
待て待て待て、人気のゲームといったら「Nintendo Switch」でしょうか。
この映画に出てくるゾンビたちはスマホを持ちながら「Wi-Fi……」「Bluetooth……」とか言ってるくらいだから、人気のゲームがゲームボーイなんてことは絶対にないわけです。
※ゲームボーイが発売されたころは通信は物理ケーブルでしたからね
要するにボブの記憶の中ではゲームボーイで時代が止まってしまっているということ。
いやぁ、本物の世捨て人でしたね。
『デッド・ドント・ダイ』の感想まとめ
『デッド・ドント・ダイ』を最大限に楽しむためには、ゾンビ映画の系譜(特にジョージ・A・ロメロ)の知識と、ジム・ジャームッシュ監督の往年の作品を観ておく必要がありそうです。
逆にゾンビ映画の知識もなく、出演している俳優たちのこともよく知らないという人が見たら絶対に「なんだこりゃ」となります。
それはもうしょうがない。
要するにゾンビ映画オタク・ジム・ジャームッシュ監督作品オタクこそ大いに笑いながら観ることができる映画。
監督も俳優や今までのファンに楽しんでもらいたくってこの『デッド・ドント・ダイ』を作ったんだと確信しました。
ジム・ジャームッシュ監督作品、まずは『パターソン』あたりから始めてみるのが良さそうですね。
個人的には素敵なアダム・ドライバーのプリっとしたお尻が拝めたのでそれだけで感謝です。