実は映画『聲の形』でキャラクター考察を既にしています。
それでも原作漫画7巻を2時間の映画に落とし込むには、なにか設定変更や省略があるはずなので原作も読んでみました。
この記事は映画『聲の形』のキャラクター考察に追記する形で書いていきます。
目次
漫画『聲の形』映画版との違い
『聲の形』は原作の漫画が7巻あり、映画の2時間という枠に収めるに当たりいくつかカットされたお話があります。
ストーリーの大筋は変わらないものの、知っていると映画を観たときになんでこのキャラクターはその行動をとったのかストンと腹に落ちやすいです。
映画制作の話
漫画『聲の形』では石田が「新人映画賞作品募集」のチラシをみて、これで賞をとれば200万円もらえるから自分の壊した硝子の補聴器代金170万円を母親に返せるとふと思ったところから、永束君の提案で映画制作が決定します。
タイミング的に佐原さんと硝子の仲が再び繋がったことと重なり、小学校の時のメンバーと高校の同じクラスのメンバーで映画制作を開始するのです。
ここでも西宮に対しての態度がじんわり滲み出てきます…。
そう、特に川井が…。
映画制作の話が本格的に進むのは、皆で遊園地に遊びに行った後。
石田は遊園地には硝子も含めて遊びに行ったのだから、映画制作にも硝子を入れるべきだと考えます。
それに監督である永束くんは同意しますが、川井さんは
「西宮さんが障害者だからってわざわざ入れなくてもいいんだよ?
それに西宮さんに何ができるかわからないし。」
というのです。
すかさず永束くんが
「彼女に何ができるのかは、彼女が決める!」
と言い返します。
永束くん石田のためだとしてもいい奴すぎるよ。
(後に硝子を作品メンバーに入れたのは彼の好意ではなく、あくまでも自分にとって何よりも大切な石田が大切に思っている人だからだと分かります……)
この時点で川井さんめちゃくちゃ偏見入ってるじゃないですか。
それなのに真柴くんが石田に同意したら
「うん。皆でやろう!」
とか言い出すのです。
もう、は???って感じですよね。
そして硝子が石田が意識不明のなかで行動を起こす場面も、「映画の続きを作る」という名目で動き始めるのです。
※映画では永束くんとの筆談の場面ですね。
その後映画は完成し、文化祭でも上映されます。
まあその後予選通過して、選考会で酷評されるんですけどこれがまたいいんですわ。
こればっかりは漫画を読んで欲しい。
各個人の心理描写
基本的に映画で登場人物の内面を表そうとすると独白と回想をするしかないですよね。
でも漫画だとそれをくどくなく出来る。
各登場人物がどんな人となりで、どんな経験をしてきたのか。
それをモノローグやエピソードでストーリーに挟んできているのでより理解が深まります。
特に映画ではちょい役でしか出なかった小学校の担任の竹内先生・西宮八重子・真柴智。
この三人は映画版だけでは違う解釈をされかねないので、今回新たに考察していきます。
漫画『聲の形』キャラクター考察
『聲の形』映画版を観たときに同級生に関しての考察は一通りしていますので、石田や硝子、その他同級生に関しての考察は以下を参照ください。
>>聲の形 キャラクター考察 なぜその行動をとったのか解説!
今回は漫画『聲の形』でしか描かれていないエピソードから
●西宮八重子
●竹内先生(小学校担任)
●真柴智
この三名について考察していきます。
西宮八重子
夫と八重子が風疹の予防接種をしていなかったばかりに、硝子を妊娠中に風疹に感染。
その結果として、硝子は先天性の難聴を患って生まれてきたのです。
※ただし発覚したのは3歳になってから。
しかし、夫側の両親は八重子に対して
「硝子が障害を持って生まれてきたのは、硝子か八重子が前世で罪を犯したからだ。」
「君がこんな子供を産むなんて聞いてない。騙された。」
「(障害が)悪いことじゃないというなら、君が育てればいい。」
と自身の過失を棚に上げて、八重子を攻め立てた結果離婚。
八重子は夫からこの様な屈辱を受けたことで、自分が硝子を健常者と同じ様に一人前に育てなくてはいけない。
障害者であるこの子を”普通に”育てて自分が正しかったことを証明してやる。と思ったのではないでしょうか。
だからイジメの対象となると知っていても、硝子を普通科の小学校へ通わせた。
そして家庭内での手話も禁止し、八重子自身も手話を覚えようとしなかったのです。
夫が味方だったなら良かったものを、一緒に子供を育てていく立場にある夫が義両親の味方をする状況では、嘘でも強くならざるを得なかったのでしょう。
同じ女性として、もし自分が命をかけて産んだ子供に対してこんな態度をとられたらと思うと八重子に同情せざるをえませんでした……。
映画版ではこの背景が全く出てこないので、すぐに手を出す毒親っぽく見えてしまいます。
植野に「子供のしつけができねーなら、ガキなんて産んでんじゃねえ。」と言われて、きっと夫家族に言われたことが頭によぎったんでしょうね。
あのキレ方は本当に怖かった。
まあ、実際ちょっとやりすぎなとこもあるんですけどね。
竹内先生
映画版でも石田に全責任を押し付けるあたり最悪な人間だなぁという印象でしたが、漫画を読んでこんな人間が教師でいいはずがないと感じました。
ただ少なからずいるんですよね。
こういう教師。
硝子のことをからかう石田に最初こそ注意っぽいことをいうものの、音読の際に石田が硝子の声の真似をしたときには
「とにかく、仕方のないことはあるんだ。」
と言って終わらせています。
更に喜多先生が硝子のために皆で手話を覚えようと提案したときも、竹内先生も…と巻き込まれそうになると
「自分がやるより先に生徒に覚えさせるなんて恥ずかしいと思いませんか?今回はやめておきましょうよ。」
と逃げます。
更に生徒間で何で硝子はなぜ耳が聞こえなくなったのかという話題になったとき、石田が
「耳にお経書き忘れたんだよ!」
と冗談を言うと誰よりも先に竹内先生が笑うのです。
硝子の補聴器を壊すようになったときには自己責任と言い、挙句の果てに
「俺に恥をかかせるな。でもお前(石田)の気持ちは分かるよ。」
と本音が出てしまうのです。
イジメている人間に対して注意するならともかく、硝子をイジメるお前の気持ちもわかると生徒のお手本となるべき先生が言うなんて論外です。
硝子がイジメられていることが学校側にバレてからは石田が自主的に謝るのを阻止して、石田を犯人に仕立て上げます。
更に今度は石田がイジメにあうようになってからは
「(お前がイジメにあうのは)自己責任だ。」
と言って相手にしない。
要するにイジメをしていた石田はイジメられるのは”仕方のないこと”だというのです。
後に高校生になった石田と真柴が映画のロケハンに小学校を訪れた際に当時のことに言及しますが
「あのクラスはハズレくじを引いたんだ。あの一家は”自由と勝手をはき違えた”んだ。」
とまで言います。
結局、真柴にペットボトルの水かけられるので真柴Goodjob!!!という感じですけど。
真柴智
小学生のころに眉毛が人より太いことでイジメられた経験があります。
更に先生に対してもあまり良い印象を持っていない。
高校生の今でこそイケメンで名が通っていますが、彼が自分の見た目に敏感な理由はここにあるのでしょう。
そして真柴くんは学校の先生になりたいと思っています。
その動機は自分をイジメていた同級生が妊娠していると知ったこと。
自分をイジメていたようなクズな人間が、どんな人間を産んで、その子はどんな人間に育つのだろうか。
もしイジメられていても自分は助けないし、せいぜいクズな人間に育つがいい……。
そう思っています。
だからイジメをしていた人や、見て見ぬふりをしていたような人間にも厳しい。
後半は川井さんに対しても、遠回しに
「自分はイジメていないと思ってる人も、加害者だよ。」
と伝えています。
川井さんは真柴くんのことが好きでしょうが、真柴くんが川井さんを心の底から好きになることはないでしょうね。
漫画『聲の形』まとめ
誰でも自分に当てはまる登場人物がいるのが『聲の形』という漫画の凄い所でもありおそろしいところでもあります。
例えばイジメられた真柴くんでも、夫家族から酷い仕打ちをされた西宮八重子にしても、本人が悪いわけではないのに突然なにかに巻き込まれてここまで来てしまった。
弄れて捻れて、元に戻れなくなってしまったのです。
誰が根本的に悪いでもないのに最終的に全員が悪者になってしまう。
そんなディスコミュニケーションによる理不尽な現実を突き付けてくる作品です。
この作品をきっかけに、人との関わり方を考えるきっかけになればいいな。
少しでも映画を観て気になった人は、原作の漫画を読んでみてくださいね。
公式ファンブックがちゃんとした原作者の見解も読めるので、更に詳しく知りたい人にはもってこいです。
ちなみに6巻の巻末では原作者の大今良時先生と女優の有村佳純さんの対談も載っているのでお見逃しなく。