洋画

ロシアアニメーション傑作選2019 in京都みなみ会館

ロシアアニメーション

目次

ロシアアニメーション傑作選2019

ロシアアニメーションといえば

私の中でロシアアニメーションといえば、『チェブラーシカ』『雪の女王』が思い浮かびます。
ロシアの国民性として勤勉さが良しとされるところや善き行いをすることを重視する、忍耐強くいることが美徳など、日本とよく似ているのでアニメーションを観ていても共感できたり、抵抗なく観ることが出来ると思います。
コマ撮りの作品も多くあり、人形アニメーションも多いので出てくるキャラクターの造形も細かく可愛らしいところも特徴です。
またロシアアニメーションは、皆さんのよく知っているジブリの宮崎駿さんや高畑勲さんにも影響を与えたとも言われています。
今回は1950年~70年代の10分~20分程度の作品が多く揃っていますが、今見てもくすっと笑えて感動できる大粒ぞろいです!

ラインナップ

今回鑑賞したのはロシアアニメーション傑作選B
『いたずら仔猫』1953年/11分
『トプティーシカ』1964年/10分
『大人になる方法』1967年/10分
『くいしんぼうのクージャ』1969年/11分
『ワニのゲーナ』1969年/20分
『小舟のチージック』1970年/10分

作品紹介

いたずら仔猫

おばあさんと女の子に飼われている仔猫は自由でわがままで奔放。
家をめちゃくちゃにした仔猫は女の子に「悪い子は出ていきなさい!」と怒られ、森へ逃げ込みます。
森ではウサギとリスとハリネズミに出会い、みんなでいざ冒険へ!
川に流されそうになりながらおじさんウサギに助けられ、皆を家へ送ってもらいます。
仔猫は森には家はありません。帰り道も分かりません。
途方に暮れていた時、ずっと見ていたカラスが家まで道案内をしてくれて家に戻ることができました。
それから仔猫はわがままを止めて、森の友達に冒険に誘われてもお利口に家にいるのでした。

トプティーシカ

小熊のトプティーシカは冬の間に寝て過ごすだけなんてつまらない。
母親の言うことを聞かずに冬の原っぱへ出かけます。
偶然出会ったウサギと仲良くなり、そりで遊んだり、シーソーで遊んで仲良しに。
家に帰ってウサギと仲良くなったと母親に伝えると大目玉を食らうのでした。
一方ウサギも親から二度と小熊と遊んではいけない、家を出てはいけないと釘を刺されます。
二人はお互いが訪ねてくるのを冬の間待ち続けました。
春になり原っぱに出ると、ウサギと遊んだ思い出が沢山…。
トプティーシカが川に出ると家ごと流されているウサギ一家を目撃します。
急いで助けに向かうも、流されてしまうトプティーシカ。
トプティーシカに向かって流氷が流れてきます…。
走りに向かうウサギ…。
トプティーシカのお母さんはトプティーシカを助けようとしますが、間に合いそうにありません。
ウサギもろもと流氷にぶつかる寸前、ウサギのお母さんが二人を助けます!
このことで、ウサギとトプティーシカ一家は仲良くなり、家を隣に並べて仲良く暮らしました。

大人になる方法

仔猫は片付けが苦手。いつも部屋を散らかしては怒られます。
お片付けをするようにきつく言われたものの、家の外の世界に気を取られる始末。
色々な仕事や集団に混ざろうとしますが、ことごとく「君は小さいから、大きくなったらね」と言われます。
仔猫は色々な人を真似て大きくなろうとしますが失敗。
草木が雨を浴びて育つのをみて真似をします。
ずぶぬれになりながら「自分は大きくなれないの?」と思う仔猫。
そんな仔猫に太陽がお部屋の片づけをするように助言します。
勇んで部屋を綺麗にすると、家に帰ってきた親に「綺麗にお片付けできるなんて、立派になったこと」と褒められます。

くいしんぼうのクージャ

猫のクージャは食いしん坊。何から何まで食べつくします。
絵本の表紙のウサギのためのケーキもちぎって持って行ってしまいました。
起こった絵本の動物たちは、クージャからケーキを取り戻すため絵本の世界から出てきます。
寝ているクージャからケーキをこっそり取り返すために陽動作戦を決行したり、
冷蔵庫に閉じ込められたりもしながら、危機一髪でケーキを取り返すもクージャも取り返そうと必死です。
逃げるために高いところに上ったり隠れたりしますが、クージャはネコなので追いつかれてしまいます。
最後は皆で力を合わせて、大きな動物に擬態することでクージャを負かすことができました!
ケーキを接着剤で絵本にくっつけて…これで安心して絵本の中に戻ることができました。

ワニのゲーナ

みかんの箱の中に紛れていた人間とも動物とも言えない奇妙な生き物。
立たせてもすぐ倒れてしまうので「倒れ屋さん=チェブラーシカ」と名付けられました。
チェブラーシカは正体不明のため動物園での受け入れも拒否され、
電話ボックスに住みながらリサイクルショップで働くことになりました。
その頃、ワニのゲーナは規則正しい動物園勤めや一人でチェスをすることにも飽きて、
張り紙をして友達を募集しようとします。
子犬のトービクと女の子のガーリャがその張り紙を見て、ゲーナを訪ねてきます。
三人はすぐに仲良くなり、後から訪ねてきたチェブラーシカも最初は遠慮がちに仲間に加わります。
一方町ではシャパクリャクというとにかく意地悪なばあさんが暗躍中…。
チェブラーシカたちにもちょっかいをかけようとします。
ゲーナ達は友達が集まる家を作ろうと、人間から猫まで集まって家を建設します。
家が完成したものの、もう友達も沢山いるし、チェブラーシカの家にしようと提案するゲーナ。
でもチェブラーシカは家を寄付しようと提案します。
完成した家にはこっそりとシャパクリャクからお花が送られていたのでした。

小舟のチージック

小舟のチージックは働き者。
おじさんたちに新聞を届けたり、お医者さんに薬を届けたり、兄弟に物資を届けたり。
そんな毎日でしたが、大洋に出たチージックは流されて、知らない南国へと流れついてしまいます。
そこでは楽しく踊り、歓迎されますが、どうしても故郷が恋しくなり…。
故郷に戻ると南国とは違う寒い雪国。流氷なんかを乗り越えながら皆の元へ帰っていくのでした。

全体を通しての感想

作品に出てくる動物がネコ・ウサギ・クマ・ハリネズミが多く、ロシアで愛されている動物が観ていくうちにわかりました。
日本でハリネズミをメインの登場人物(動物)にするというのはあまりないような気がします。
ちなみに、ロシアの国獣はクマ双頭の鷲です。
熊が国獣というのはいかにも雪国らしいですね。

アニメーションは子供向けに作られていることが多く、その国の価値観で規範となるような行動を主人公がとる場合がよくあります。
『いたずら仔猫』ではいたずらを止めて大人しく家にいるように。
『トプティーシカ』では敵味方なく助け合い友好を深める。
『大人になる方法』では大人になるためには、まずはお片付けができるようになること。
『くいしんぼうのクージャ』では仲間のために全力を尽くす。
『ワニのゲーナ』では親切にしあい助けあうこと。そして自分のアイデンティティを探すこと。
『小舟のチージック』では実直に働くことの良さと、故郷を愛おしむ心。
それぞれの作品は大人が観ても子供が観ても楽しむことが出来るものになっています。

特に気になったのは二作品。

そのうちの一つ『トプティーシカ』は1964年に制作されています。
ロシアはこの頃キューバ危機を乗り越えたものの、まだ冷戦のただなかという状態。
それでもこういった作品が生まれていたということは、少なくともこれから冷戦時代が終結していく予兆があったのだろうか。時世関係なく様々な価値観の作品が生まれるのが芸術であるとも思う一方、やはり時代の流れを敏感に感じ取るのも芸術であると思うので難しいですね。

二つめの『くいしんぼうのクージャ』は実写と人形アニメーションのコラボレーション作品。
最初実写のネコが出てきてちょっとびっくりしました(笑)
それにしてもこのネコがめちゃくちゃ演技が上手い
冷蔵庫に手を挟むところとか、最後の驚くしぐさとかは人間でも入っているのかと思うくらいでした。
(ネコって時々人間でも入ってるのかと思う動きしますよね…)
一緒に写っている場面が少ないものの、ネコに合わせて人形を動かすの結構大変だろうなとしみじみ思いました。
最初は違和感あるかと思いましたが、現実の世界に人形が飛び出してきた感じが大きさとかも絶妙でリアルに感じられて楽しかったです。

余談ですが、最後に観た『小舟チージック』。
まさかの船が可愛く動くアニメーションで、セリフとかも殆どなく基本は音楽に合わせて動くのみ。
楽しめるか不安でしたが、子供向けのNHKの某番組っぽくって良かったと思います。
南国の時のノリノリの音楽がまた絶妙で、それに合わせた人物の動きもTHE南国を感じさせるもので短いながらも楽しめるパートでした。

アニメーションをオススメする理由

映画初心者の方に「何観たらいいかな?」と勧められたら、とりあえずアニメーション作品をオススメすることが多いです。
本心では凄くずっしりくる洋画とかもオススメしたいこともあるのですが、たぶん慣れていない人は長時間座って集中して、沢山の情報を2時間30分以上受け取るということが難しい人も多いと思うからです。
アニメーション作品は時間もそこまで長すぎるものもないし、子供から大人まで観られるように心配りがされているケースが殆どです。
そういうものに慣れていきながら、徐々に映画の世界に足を踏み入れていく。
そんな入り口として一番開かれているのがアニメーション作品なのではないでしょうか。

気軽に子供から大人まで観られる。
という側面と共に、沢山の人の沢山の技術が詰め込まれているのもまた面白いところです。
人形アニメーションだったら、どういう素材で作っているのかとか、メイキングに思いを馳せるもの楽しいです。
ちょっと前だとウェス・アンダーソン監督の『犬ヶ島』なんかは人形を使ったストップモーションアニメーションですね。
メイキングブックが公式で出ているので、そういうのを後から読むのも一興です。

京都みなみ会館ではロシアアニメーションに引き続きチェコアニメーションも上映しているようです。
アニメーション観てみようかなと思ってくださった方は、足を運んでみるのはいかがでしょうか。