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【ネタバレあり】1917 命をかけた伝令 ワンカットは嘘?本当?!

【ネタバレあり】1917 命をかけた伝令 ワンカットは嘘?本当?!

◎ゴールデングローブ賞 映画部門 作品賞
◎アカデミー撮影賞
◎アカデミー録音賞
◎アカデミー視覚効果賞

全編ワンカット映像と銘打った1917 命をかけた伝令
本当にワンカットなのか?

実際に観てきた筆者が解説します!

1917 命をかけた伝令の見どころ

切れ目のない映像による没入感
絵画的な美しい映像
主人公に寄り添うストーリー

この記事はネタバレを含みます。
鑑賞前の方はご注意ください。

目次

『1917 命をかけた伝令』 概要

『1917 命をかけた伝令』のあらすじとスタッフ・キャストを紹介します。

あらすじ

1917年。第一次世界大戦の真っただ中。
西部戦線ではドイツ軍とフランス・イギリス連合国軍の睨み合いが続いていた。
第八連隊に属するトム・ブレイクとウィリアム・スコフィールドはエリンモア将軍から重要なメッセージを届ける任務を与えられる。

マッケンジー大佐率いる第二連隊は退却したドイツ軍を追って明朝攻撃をしかける作戦であった。しかし、航空写真によってドイツ軍が陣地を築き待ち構えている罠であることが判明する。
電話線もなく、すべての連絡手段を絶たれた今、1600人の友軍を救うため、ブレイクとスコフィールドの伝令が必要となったのである。

しかし、第二連隊のいるクロワジルの森への道のりはドイツ占領下の町を超える必要がある。
スコフィールドは経験から夜になるまで待とうとするが、ブレイクは兄のいる第二連隊を救うため、白昼の中敵地を進む決意をする。

スタッフ・キャスト

スタッフ

監督 / 脚本 / 製作 :サム・メンデス

脚本:クリスティ・ウィルソン=ケアンズ

撮影監督:ロジャー・ディーキンス

編集:リー・スミス

衣装:ジャクリーン・デュラン / デイビッド・クロスマン

音楽:トーマス・ニューマン

キャスト

スコフィールド上等兵:ジョージ・マッケイ

ブレイク上等兵:ディーン=チャールズ・チャップマン

スミス大尉:マーク・ストロング

レスリー中尉:アンドリュー・スコット

ブレイク中尉:リチャード・マッデン

エリンモア将軍:コリン・ファース

マッケンジー大佐:ベネディクト・カンバーバッチ

『1917 命をかけた伝令』 感想・考察・解説

『1917 命をかけた伝令』の感想・考察・解説を以下にまとめています。
この作品が一際注目されていたのは”全編ワンカット”をうたっていたからです。
その点における真偽やワンカットすることで起こる効果、そして私の個人的お気に入りポイントについてもお話していきます。

ワンカット映画はウソ?本当?!

1917 命をかけた伝令は予告で全編ワンカット映画とうたっています。

しかし、この映画が119分ずっとカメラを止めずに回されたワンカット映画か?と聞かれたら

ワンカット映画ではないと言えます。

撮影手法としてワンシーンワンカットで撮影はされています。
ワンシーンワンカットの映像をつなげたことで、
結果としてワンカットで撮られたような映像に仕上がっているということなのです。

そして明らかにカットが切られている場面が一か所存在します。

スコフィールドが橋を渡り、
潜伏していたドイツ兵を近距離で狙撃した直後の場面

です。

意識を失ったスコフィールドに寄り添うように、場面も暗転します。

次の場面は意識を取り戻したスコフィールドのクローズアップから始まるのです。

以上のことから、映画として観たときも暗転が存在し2カットに見える
と言えるでしょう。

ただし、これらの事実を覗いてもカット割りが多い従来の映画と比べても明らかに没入感があります。

文字通りまばたきを忘れるくらいのめり込める映画でした。

映画と瞬きの関係

あなたは映画を観ていてどんなタイミングで瞬きをしていますか?
実は瞬きと映画には驚きの関係があるのです!

今回は瞬きに関する研究をご紹介します。

複数人の被験者に
ストーリーのある映像(この研究では「ミスター・ビーン」の映画)
ただの風景の映像
を見てもらい瞬きのタイミングを計測した。

すると「ミスター・ビーン」の映像を見ている時だけ個人間・個人内で瞬きのタイミングが一致した。
皆が瞬きするタイミングは、主人公が車から乗り降りした瞬間や車が駐車した瞬間。
動作の終了や繰り返しの場面だったのです。

私たちは無意識に出来事のまとまりを見つけて、
その切れ目で瞬きをしているのです。

そう考えると、普段はカット割りのタイミングで多くの人が瞬きをしていることになります。
それが1917 命をかけた伝令ではどうでしょうか?

カット割りが最小限に抑えられているため、一場面がかなり長くなっていますよね。

つまり必然的に瞬きの回数が減るのです!!

没入感や恍惚感があるのはそのせいもあるのかもしれませんね。
疲労感もあるかもしれませんが…。

参考サイト:生命誌ジャーナル

絵画的な美しい映像

ワンシーンワンカットの撮影では遠景だけを切り取ったり、いきなりクローズアップをすることはできません。
そんな中でどこを切り取ってもポスターになる。
美しい映像の数々を生み出しているのが本作の見どころでもあります。

私のお気に入りのシーンを三点ご紹介します。

・川に浮かぶスコフィールドとチェリーの花
・炎上する教会とスコフィールドの後ろ姿
・気に寄り掛かるスコフィールドとブレイク(ファースト&ラストショット)

そこだけを切り取っても美しい絵画的風景です。

戦争という殺伐とした死と隣り合わせの世界。
その中において家族や友人のことを想う瞬間がこの映像には存在します。

あなたも是非、映画のなかのお気に入りショットを探してみてくださいね。

撮影機材の進化

1917 命をかけた伝令はワンシーンワンカットを実現するため撮影機材にもこだわりました。

撮影監督のロジャー・ディーキンスは殆どすべての映画をARRI社のALEXAカメラシリーズで撮っています。

今回主役の二人を追いかけるように常に動くカメラワークを実現するために、
カメラの軽量化が必須の課題だったといいます。

そこでARRI社にALEXA LFの小型化の話を持ち込んだというのです!
タイミングよくARRI社はカメラの小型化に着手していたため、
いち早くディーキンスがALEXA Mini LFを撮影で使用できたというわけです。

ARRI社は今作でまた映画界に大きく貢献することとなりました。

実際に使われたALEXA Mini LF のページはこちら⇩
ALEXA Mini LF | ARRI

主人公に寄り添うストーリー展開

1917 命をかけた伝令はただの戦争映画ではありません。

大きな目的は重要な伝令を命がけで届けること。
ですが、主人公たちの中ではもっと個人的な目的にフォーカスしていたといってもいいでしょう。

ブレイクは第二連隊にいる兄を助けたいという想い。

スコフィールドはまずは生き延びること。
ブレイクを失ってからは、ブレイクの兄に会ってブレイクの死を伝えること。

二人ともとても家族を大切にしていることを劇中で伺うことができる場面があります。

・チェリーの木を見てブレイクが家族の思い出を語る場面
・ブレイクが死の間際、母親に手紙を出すよう伝える場面
・スコフィールドがフランス人の赤ん坊をあやす場面
・ブレイクとスコフィールドが胸ポケットに家族の写真を入れている場面

戦場にいる人間は、人を殺す兵器などではなく
生きて家族に会いたいと願っている一個人の集まりだと痛感させられます。
実際、冒頭でもクリスマスの休暇を気にしているように日常は続いているのです。

二人の背中を追い、姿を追いかけたこの映画は
戦争の中の日常的な一瞬もを映し出しているといっても過言ではないでしょう。

1917 命をかけた伝令のまとめ

1917 命をかけた伝令ワンカット風映画として、新しい試みがなされました。

カットを極力抑えた映像なので、没入感が全く違います!!

これは映画館で観るべき映画です。

また撮影は主にイギリスで行われており、出演者もイギリス・スコットランド俳優揃いです。
主演の二人だけでなく
コリン・ファースにベネディクト・カンバーバッチなど…。

英国俳優好きな方にはたまらない映画だと思います。

物語は後半にいくにつれて緊迫感が高まり
観ているこちらが息継ぎを忘れ、前のめりになります。

スコフィールドが前線を横切りながら走っている姿は
「お願い!どうか無事にマッケンジー大佐のところまで彼を連れていてあげて!!」
と願わずにはいられません。

ファーストカットで木に寄り掛かっているスコフィールドの隣にはブレイクがいました。
ラストカットでは木に寄り掛かるスコフィールドの隣には誰もいません。
その事実に胸がグッと痛くなります。

きっとこの後もスコフィールドは目を閉じ平常心を取り戻そうとするでしょう。

しかし、上官の「Go!」の一言で前線へと命を張っていくことになる。
そんな一瞬にして戦争という現実が隣にくる世界を作り出してはいけないのです。

1917 命をかけた伝令は戦争を体験したことがない世代が作る、究極の戦争体験映画ともいえるでしょう。
そういう意味では、若い世代がこの映画を映画館に観に行くことを願ってなりません。