在宅勤務や外出自粛が続くなか、「何か流行りの映画でもみるか~」とおもいNetflixで鑑賞しました。
この感想を書いている現在、2020年4月某日。
Netflixのベスト10に連日ランクインしているのが
『コンテイジョン』
実は公開当時は映画館で見逃した、というより目にも止まっていなかった作品でした。
そんな作品がなんでこのタイミングでベスト10にランクインしているのか気になったので観てみることにしました。
世界が未知のウイルスに侵されていく…。
そんなシナリオは腐るくらい沢山あるのに、なぜ『コンテイジョン』がこんなに評価されているのかにもこの記事では触れていきます。
多分見た人は気になっているでしょう、アルダーソン社が何の事業をしているのかについても考察しています。
この記事にはネタバレを含みます。
まだ観ていない人はご注意ください。
目次
『コンテイジョン』概要
『コンテイジョン』のあらすじはこんなかんじ。
香港出張からアメリカに帰国したベスは体調を崩し、2日後に亡くなる。時を同じくして、香港で青年が、ロンドンでモデル、東京ではビジネスマンが突然倒れる。謎のウイルス感染が発生したのだ。新型ウイルスは、驚異的な速度で全世界に広がっていった。
米国疾病対策センター(CDC)は危険を承知で感染地区にドクターを送り込み、世界保健機関(WHO)はウイルスの起源を突き止めようとする。だが、ある過激なジャーナリストが、政府は事態の真相とワクチンを隠しているとブログで主張し、人々の恐怖を煽る。その恐怖はウイルスより急速に感染し、人々はパニックに陥り、社会は崩壊していく。国家が、医師が、そして家族を守るごく普通の人々が選んだ決断とは──?引用元:『コンテイジョン』公式HP
正直このあらすじ読んでも何が受けているのかさっぱり分かりませんね…。
やっぱりよくあるお話にしか見えません(笑)
あらすじを読んでも微妙で前評判も微妙だけど、実際に見てみたらすごかった!という映画ってけっこうありますよね。
『コンテイジョン』もどちらかというとその類の映画だと感じます。
ちなみにキャストもかなり豪華。
第一発見者の夫にマッド・デイモン。
過激なブロガーにジュード・ロウ。
CDC(疾病予防管理センター)の医師にローレンス・フィッシュバーン。
WHO(世界保健機関)の免疫学者をマリオン・コティヤール。
第一感染者をグウィネス・パルトロウ。
『コンテイジョン』をみた後に『アイアンマン』を見るとポッツが不倫女にしか見えなくなってくるマジックにかかってしまいました(笑)
『コンテイジョン』が評価される理由
沢山の感染系映画があふれるなかでなぜ『コンテイジョン』が頭一つ抜けて評価されるのでしょうか?
豪華な出演陣だから?
めちゃくちゃお金がかけられてるから?
『コンテイジョン』が評価される理由はおおきく3点あると私は考えます。
●公平な視点で状況が映される
●明確な数字が示される
●2020年の現状と全く同じ
公平な視点で状況が映される
感染系の映画ってパニック映画になりがち。
パニックになる民衆にフォーカスを当てる演出ばっかりで、叫びまわってる人を2時間見続けるはめに…。
もしくは、ワクチン開発の方に主眼をおいて研究者にフォーカスをあてるか…。
それはそれで面白いんですけどね。
『コンテイジョン』は民衆・メディア・医療機関それぞれの視点を平等に描いています。
このデメリットとしては、それぞれの立場の掘り下げがあまりできないこと。
メリットとしては、視点が偏らないことで「状況」を描写することができること。
『コンテイジョン』ではメリットが前面に出ています。
映画の中で「状況」をそのまま映すことで、新型感染症が流行したときに誰がどう動くのか、どんなことが起こるのかを忠実に表すことができるのです。
それを見た私たちは新型感染症流行を第三者の視点で疑似体験することができる。
『コンテイジョン』が優れている点はここにあるのではないでしょうか。
明確な数字が示される
『コンテイジョン』では具体的な数字が提示されます。
特に研究者たちの発言は数字を持ち出しての発言が多く、それだけでリアリティが増しています。
特に印象的だったのはCDCのエリン・ミアーズ博士が感染症について説明する場面。
人間は日に2000~3000回顔を触る
=起きているあいだ1分に3~5回
R-0(ウイルスの再生産数)
=感染者1人から何人に感染するか
インフルエンザは1
ポリオは4から6
痘瘡は3
MEV-1はチーヴァー博士が係数を仮に2としましたが、その後少なくとも4に引き上げられています。
チーヴァー博士もウイルスについて
致死率は20パーセント
という確率についても言及しています。
余談ですが、フリー記者のクラムウィディのブログの訪問者数も明示されています(笑)
東京のバスで男が倒れる映像公開時は200万人
TV出演でレンギョウに言及語は1200万人
1200万人ってどのくらい?と思ったあなた。
なんと2006年時米国ユーザのYoutube訪問数と同じなんです(笑)
インフルエンサーどころではない。
超絶影響力をもっているブロガーなんですねぇ。
彼は嘘の記事を流して450万ドル稼いでいます。
日本円にして約4億8千万円以上…。
宝くじが当たったレベルですね。
ことあるごとにこうやって数字を提示してくれるので純粋に勉強にもなります。
なんといっても危機感が違いますよね。
「え、どんどん感染者数増えてる…。やばいよね?」という感覚。
映画の中だけだったら良かったんだけどね。
2020年の現状と全く同じ
2020年4月現在、新型コロナウイルス全世界で流行して日本でも国民が原則自宅待機を要請されています。
この状況下で家で映画を観ている人も多いですよね。
まだワクチンも出来ず、いつこの状況が終わるか分からない中で『コンテイジョン』を観ると、終息の兆しが見えるので安心するのでしょう。
そしてあまりにも今の状況を予見していたような正確な描写に、「そうそう!!」と頷きながら見てしまいます。
『コンテイジョン』ではMEV-1と呼ばれる新型感染症の特徴も新型コロナウイルスと酷似しているんですよ。
発病からの症状の進行は
1.咳
2.倦怠感や頭痛
3.発熱
4.手足のしびれ
5.呼吸困難
となっています。
デマ情報が流れて民衆が踊らされている様なんか現実より過激ですけどね。
スーパーは無人だから皆お金払ってないし、銀行強盗は横行するし…。
日本は道にゴミが散乱するなんてことはありませんし順番も守る人が多いですが、『コンテイジョン』は海外の映画なので余裕で人のもの盗んでいく描写もあります。
海外繋がりでいうとハグや握手など身体接触の多い文化ですよね。
タイトルの『コンテイジョン』(CONTAGION)は接触伝染という意味です。
つまりくしゃみの飛沫感染や密集空間の空気感染などではなく、握手や人が触ったドアノブに触れることで感染する接触感染が肝になってくるのです。
流石に人類が滅亡する脚本ではないので、きちんと対策して自宅待機していればワクチンが開発されて助かるかもしれない!という希望を持てるはず。
そういう意味でも『コンテイジョン』は感染症終息のベストプラクティスを示していると言えるのではないでしょうか。
『コンテイジョン』考察・感想
『コンテイジョン』の疑問や演出について考察・解説していきます。
●クローズアップの意味は?
●アルダーソン社の仕事は?
●物語は完全なハッピーエンドか?
クローズアップの意味は?
『コンテイジョン』では物語の中でクローズアップが多用されているのに気づきましたか?
それも大分これ見よがしに「ほらほら」という感じで見せられます。
実はクローズアップはすべて接触を映しているんです。
カードの受け渡し。
扉を開けるときに手が触れるドアノブ。
コップを持っている手。
バスの支柱に触れる手。
咳をしている人が水を飲む様子。
口元を触りながらコップを拭くウエイター。
手で子供に食べ物を与えている人。
こんなにも日常生活に人から人への直接的・間接的接触があるよ。
というのを見せているんですね。
最後らへんになってくると、クローズアップされなくても
「今、扉触ったよね!手洗ったのかな…?」
と勝手に心配している自分がいます。
『コンテイジョン』はタイトル通り、接触感染をクローズアップを使用してじわじわ実感させてくる映画なのです。
アルダーソン社の仕事は?
最後のシーンでどこからウイルスが来たかが明かされます。
なんと、そこには第一感染者のベスが勤めていたアルダーソン社の文字が印字されたブルドーザーが!!!
ウイルスが出来上がるまでの経路はこう。
アルダーソン社のブルドーザーがヤシのをなぎ倒していきます。
生息していたコウモリは行き場をなくしバナナの木へ飛んでいきます。
養豚場へそのバナナのかけらをコウモリが落としていき、豚がバナナを接種。
その豚が出荷され、調理しようと口を触ったシェフが手を洗わずにベスと握手をしたことで第一感染者となったのでした。
それではアルダーソン社はどんな仕事をしている会社なのか?
『コンテイジョン』の物語の中ではそのヒントになる場面が3回程あります。
まず最初に会社の資料が2回映る場面があります。
ですが、残念ながら資料の文字はピンボケしていて分かりません。
次に決定的な場面。
ドクター・ミアーズがアルダーソン社を訪ねるときにアルダーソン社の看板が映ります。
看板には
INTERNATIONAL MINING & MANUFACTURING
と書かれているのが見えます!!!
つまり、アルダーソン社の主な事業は鉱業と製造業ということになります!
アルダーソン社はヤシの木を伐採して製造工場を作ろうとしていたのか、採掘でもしようとしてたのかもしれないですね。
そしてバナナは遺伝子組み換えや農薬によって変質したものだったのかも…。
実際に南国の遺伝子組み換えバナナ問題ありますもんね。
物語は完全なハッピーエンドか?
『コンテイジョン』は最終的にワクチンが開発されハッピーエンドに見えます。
でもワクチンが開発されたからといっても予防は出来ても治療薬はないですよね??
一人がワクチンで予防していても、その人がウイルスを運んでいたらワクチン接種してない人は?
なんだかまだまだ感染者増えるんじゃないの。
と感じてしまいます。
そもそもワクチンが出来たのも第一感染から133日目。
そこから誕生日順に毎日摂取していくのでプラス365日しないと全国民にワクチンは渡りません。
あ、これあくまでワクチンの話です。
そう考えたらやっぱりベストプラクティスとは言えても、ハッピーエンドとは言えなさそうですよね。
『コンテイジョン』まとめ
『コンテイジョン』の考察・感想はいかがでしたでしょうか。
2020年の今だから見てみたい映画だと思います。
私が最も心を打たれたのはジョリーの
「春じゃなく夏もムダに失うのね。失われた144日は二度と戻らない。」
「時が止まる薬も発明してほしい。」
という言葉。
周囲の人や自分のことを考えるなら、自分本位な行動はやめて自宅待機する父ミッチを見習うべきではある。
それでも皆心の奥でジョリーと同じことを思っているんじゃないかな。
終わりが見えない戦いほどつらいものはない。
心が疲弊している様子がこの言葉からひしひしと伝わってきました。
『コンテイジョン』は正直娯楽映画という訳ではありません。
それでも今、この状況を客観視できる素敵な映画です。
きっと観て後悔はないと私は思っているので、暇を持て余している人は見てみてくださいね!